ケニアでは何十年もの間、大学の学位は安定して名誉ある仕事に就くための黄金の切符とみなされてきた。親たちは、医学、法律、工学分野でのキャリアを積めば経済的な安定が保証されると信じ、子供たちにこれらの分野でのキャリアを積むよう勧めた。しかし、新たな卒業生の波がこの物語を書き換えつつある。学位は持っていても、失業や不完全雇用に幻滅した彼らは、ビジネス世界へ進出し、情熱を注ぐプロジェクトで繁栄する企業へと変えている。
オーガスティン・ムトミ・コビア氏は、2013 年にケニヤッタ大学を卒業し、物理学を専攻して一般理学士号を取得したとき、研究、学術、またはエンジニアリングの分野で活躍する将来を思い描いていた。しかし現在、彼は研究室で働く代わりに、粘土を成形して地元や海外のバイヤーの注目を集める素晴らしい陶器作品を作ることに日々を費やしている。
物理学の学位を取得した後、白衣を脱いで陶芸のろくろを手にし、今では陶芸の分野で予想外のキャリアを積んでいるコビア氏だが、科学から芸術への道は計画されたものではなかったと語る。2024年、彼は自分の専門分野で高収入の仕事を見つけるのに苦労し、その仕事が自分の情熱を追求する道を妨げることを悟った後、キャリアを辞めて自分の夢を追いかけることを決意した。国が依然として高い失業率に苦しんでいる中、辞職の決断は難しいものだったと彼は言う。
ケニア国家統計局の2023年の報告書によると、ケニア人の失業者数は 2022年12月までの四半期で289万人から297万人以上に増加し、労働市場の苦境を浮き彫りにしている。毎年100万人近くの卒業生が就職市場に参入することで、この状況はさらに悪化している。彼にとって、自分の情熱を育てたいという意志は、今のキャリアを続けるよりも強かったのだ。彼は、学校のプロジェクト用の良質な粘土が不足していることを指摘した教師の友人に触発され、2024年6月にKobi Ceramicsを設立し、起業家としての道を歩み始めた。
粘土から生み出される職人技に興味をそそられ、彼は自分でもやってみることにした。好奇心から始まったものが、すぐに情熱に変わる。「友人から聞いた話では、学校では生徒に粘土の持参を求めているそうですが、どこで手に入れたらよいか分からない生徒が多いそうです。そこで私たちは、粘土をパッケージ化して提供することにしたのです。学校でテストしたところ、教師たちの反応は驚くほどでした」とコビアさんは回想する。「粘土の塊がどのようにして美しく機能的なものに変化するのかということに魅了されました。ある意味、物理学を思い出し、物質を操作し、さまざまな力がどのように物質を形成するかを理解するのです。」
コビア氏は、オンガタ・ロンガイに会社を構え、この分野での正式な訓練を受けていないにもかかわらず、粘土を使った実験を始めた。科学のバックグラウンドにより、彼はさまざまな種類の粘土の特性と焼成技術を理解し、高品質の陶器を作る上で優位に立つことができた。当初、その移行は困難でした。多くの人が、趣味としか思えないもののために「立派な」職業を捨てるという彼の決断に疑問を抱いたとコビアは言う。しかし、コビアは決心を曲げなかった。当時の貯金を使い、工房を開いた。「今では、会社の成功を確実にするための従業員が30人います 」と彼は誇らしげに語る。
彼の成功は、伝統的なホワイトカラーの仕事から離れ、創造的で起業的な事業を模索し、型破りなキャリアを受け入れるケニアの若者が増えている傾向の一部である。同社は昨年設立されて以来急速に成長、現在は主にナイロビ周辺の500以上の学校にソモ・セラミックス・モデリングクレイを供給している。生産能力は1日5,000パック、年間生産量は200万パック。
陶磁器産業の推定市場価値は122億シリングであるにもかかわらず、ケニアは依然として陶磁器の純輸入国である。コビア氏は、子供たちに地元産の粘土を幼い頃から教えることで、この状況を変えたいと考えている。国際貿易に関する国連COMTRADEデータベースの2023年のデータによると、主に陶磁器の輸入で推計されたケニアの陶磁器市場の価値は約9,484万ドル（123億シリング）です。しかし、この道のりに課題がないわけではありません。現地での生産コストが高いため、安価な輸入品との競争は依然として困難です。「市場で目立つために品質を重視しています。安価な中国からの輸入品とは競争できませんが、電力コストなどのインセンティブにより、ケニアの人々に高品質な製品を提供することができます」とコビア氏は言う。
コビア氏は個人的にこの事業に1000万シリング以上を投資しており、現在はナイロビと沿岸地域への拡大を視野に入れている。「2027年までにケニア市場の80％を獲得し、地元の消費者に品質と手頃な価格の両方を提供することを目指しています。」コビア氏は、就職市場で自分の足場を見つけるのに苦労している他の若い卒業生たちに刺激を与えたいと考えている。
出典：THE STAR
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