小説「敦煌」から中国シルクロードの歴史と文化を知る、ニーハオ!

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中国アジア旅游商大会FAMツアー2025

2025年8月、中国文化と観光部国際交流局の主催により、「アジア旅游商大会2025」と連動した「ニーハオ!中国アジア旅游商大会FAMツアー2025」が開催された。本ツアーは、中国インバウンド観光の振興とアジア諸国との交流促進を目的に、日本をはじめ韓国、タイ、ベトナムなど各国のメディアや旅行業関係者が招かれ、実際に現地を視察するプログラムである。視察の舞台となったのは、中国の歴史と自然が融合した福建省・甘粛省の観光スポット群。ここでの、旅の見どころを紹介する。

1987年にはユネスコ世界文化遺産に登録された敦煌莫高窟

まず、今回の視察で注目を集めたのが、中国西部・甘粛省敦煌市の莫高窟。東西文化の交差点として栄えたシルクロードの黄金地帯にあるこの世界遺産は、井上靖の小説「敦煌」の舞台としても有名な場所だ。ゴビ砂漠の断崖に沿って並ぶ全492窟の石窟群には、総面積45,000平方メートルを超える彩色壁画と2,400体以上の仏像・塑像が保存されている。莫高窟は、壁画や彫刻によって仏教の世界を描き出すだけでなく、多様な民族文化や交易の影響を今に伝える生きた歴史の舞台だ。特に唐代の彩色壁画は色彩豊かな精緻な表現が特徴で、空を舞う天女像「飛天(フェイティエン)」は、音楽と舞の優美さを象徴している。第96窟には高さ34.5メートルの弥勒菩薩像が安置され、迫力ある姿に訪れる者は圧倒される。その他、328窟や329窟では、釈迦と弟子たちの物語が描かれ、331窟や332窟では極楽浄土を表現した壁画を鑑賞できる。

砂漠のオアシス「鳴沙山」と「月牙泉」

敦煌の南約5キロに広がる「鳴沙山」は、砂が風に揺れるときに「鳴る」と称される不思議な砂漠。夕日に染まる砂丘は幻想的で、古来から旅人を魅了してきた。北麓には三日月形の泉「月牙泉」が静かに湧き、砂漠の荒涼とした風景に潤いを添えている。この対照的な景観は、まさに敦煌ならではの絶景である。

深夜まで賑わいを見せる沙洲夜市

日没後の敦煌を彩るのが沙洲夜市(敦煌夜市)だ。華やかに彩るこの夜市は、飲食店や土産物屋、食材などを扱う露店が集まり、観光客は地元の特色ある食材や手工芸品を楽しめる。夜市の賑やかな雰囲気は、敦煌独特の文化体験を提供し、現地の人々との交流をも楽しめる場となっている。

美しい景観を堪能できる七彩丹霞景区
熱気球などのアクティビティも人気

甘粛省の張掖に広がる七彩丹霞景区は、色彩豊かな岩層が織りなす絶景スポットで、近年中国国内の人気観光地として注目を集めている。地質学的な造形美と大自然の広がりに圧倒される風景は、まるで絵画の中に身を置いたかのよう。

圧倒的な景観を誇る馬蹄寺石窟

また、馬蹄寺石窟は、断崖に沿って掘られた石窟群で、仏教彫刻や壁画を通じて歴史的価値を体感できる。さらに、粛南裕固族風情走廊では、少数民族の伝統文化や暮らしぶりを間近で体験できる。色鮮やかな衣装や民俗舞踊、手工芸品に触れることで、中国内陸部の多様な文化に理解を深められる。

迫力満点の平山湖大峡谷

平山湖大峡谷は、大自然の迫力と渓谷美を楽しめる景勝地で、渓流と断崖が織りなす景観は、訪れる者に自然の壮大さを実感させる。

心落ち着く清源山風景名勝区の空間

海上シルクロードの起点として栄えた福建省では、清源山風景名勝区や泉州少林寺を巡る旅も実施された。清源山は、豊かな自然と歴史的建造物が共存する場所。泉州少林寺は武術の修行場として知られ、宗教と文化の結びつきを体感できる。海上交易と陸上シルクロードの両方に関わる都市として、古代中国の国際的な交流の面影を感じられる。

今回のFAMツアーでは、観光名所巡りにとどまらず、歴史、文化、自然の多層的な魅力を体感できたことが大きな収穫である。莫高窟の芸術に息をのむ瞬間、鳴沙山の砂丘を歩きながら月牙泉を眺めるひととき、沙洲夜市で現地の人々と触れ合う時間……。こうした体験を通じて、中国の奥深い観光資源と、アジア諸国との文化交流の意義を改めて感じられる旅であった。

【撮影/取材:izumi】

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